歴史上、指圧の名称は大正時代に玉井天碧が記した「指圧法」に初めて見ることができます。
戦後、手技療法の法制化の過程と前後して浪越徳治郎が日本指圧専門学校を創立しました。ここから輩出された卒業生が様々な流派の指圧法を編み出しています。
指圧が「SHIATSU」として海外へ普及していった背景には、浪越徳治郎、増永静人を始めとする先達の尽力があります。
様々な指圧の流派
浪越 徳治郎:日本指圧専門学校 創立者
従来の指圧点(ツボ)を数字に置き換えて、点数、回数を定めて定量化することで、一躍、日本はもとより世界に普及するきっかけとなりました。そのほとんどを母指で押圧する母指圧を特徴とし、前頚部と腹部の指圧を重要としています。
浪越徳治郎によって設立された日本指圧専門学校は、国内で唯一、指圧師養成を目的とした国家資格を取得できる専門学校です。
増永 静人:医王会 創設者
東洋医学における医療としての指圧を追求し、経絡経穴との関係に着目して考案されました。海外では 『Zen-Shiatsu』 と呼ばれています。浪越指圧の基本である母指圧よりも、肘や膝などを用いて経穴を押圧することを特徴とします。
小野田 茂;日西指圧学院 院長、浪越指圧ヨーロッパ 代表
浪越指圧をベースとして、操体法やカイロプラクティックなどの考え方を取り入れた独自のASPA理論に基づいて全身のバランスを調整することを目的としています。
池永 清:カナダ指圧カレッジ 校長
日本で古来から 『ツボ』 と呼ばれる押圧点、反射点を、経絡理論から切り離して解剖生理学的に解明することを目的に考案されました。浪越指圧を継承しています。
遠藤 喨及:タオサンガ・インターナショナル 代表
経絡指圧の流れを汲んでおり、より宗教的で精神修行に重点を置いた指導をしています。講義の前に念仏を唱えるのも特徴のひとつです。
大橋 渉:Ohashi Institute 創設者
指圧と禅の哲学を融合させた、体のバランスを整えることに主眼をおいたオリジナルメソッド。1973年に浪越徳治郎が渡米した際、ニューヨークで開催された講習会を受講しています。
このほかにも、独自の理論を提唱している様々な指圧法があります。
一般的に海外では「SHIATSU」は鍼灸と同様、東洋医学のミステリアスな印象が先行しやすい傾向があります。また、禅に代表される精神修養のための健康法として位置づけられる例も数多くみられます。かたや国内では、あん摩、マッサージ、指圧の違いは十分に認識されていない現状に加えて、整体やリフレクソロジー等との境界も曖昧なままに混在しています。