1960年代後半、浪越徳治郎がTV番組のなかで指圧教室のコーナーを受け持つと、『指圧の心 母ごころ おせば生命の泉湧く』 のスローガンが一世を風靡しました。当時は「指圧」の看板を掲げておけば、患者さんが途切れなかったと言われるほどでした。

 

職業の変遷から見る手技療法(あん摩、マッサージ、指圧)

手技療法の歴史を振り返ると、近代では江戸時代に視覚障碍者があん摩、鍼灸、琵琶の演奏などにより自らの経済的自立を図っていました。やがて、明治の終わりから大正時代にかけて、アメリカからカイロプラクティックやオステオパシーなどが輸入されるようになり、晴眼者も治療を目的とした手技療法を行うようになります。

 

1891年(明治24年)に、東大病院にて医療マッサージ師が採用されたことを契機にして、医師の指示のもと整形外科において消炎鎮痛を目的としたマッサージが行われるようになりました。やがて、運動療法、手技療法なども含め、水治療法、温熱療法、電気療法を中心とした物理療法が普及していきます。

その頃、諸外国からは医療技術とともに医薬品も輸入されました。しかし、薬の副作用に対するアンチテーゼとして、医師以外の者が「無薬療法」(薬を使わない治療)をうたった療術(りょうじゅつ)と呼ばれる手技療法を盛んに行うようになりました。

 

1945年(第二次世界大戦後)、GHQにより日本国憲法が制定されると同時に、それまで行われていた療術は全面的に否定されました。一方では、視覚障碍者の既得権益を守るためにあはき法が制定され、「あん摩」の名称以外の手技療法を行ってはならないとされました。その後、たび重なる法改正を経て、現在は医師以外の者で免許を取得した者は、あん摩、マッサージ、指圧、鍼、灸、柔道整復を行ってよいと法律で認められています。  

今日では、あん摩マッサージ指圧師(あマ指師)が携わる職業として、病院、治療院などへの勤務、介護福祉施設での機能訓練指導、健康保険の適用となる訪問マッサージなどの業態があります。

 

参考:法制化への道のり

 

 

リハビリテーションと手技療法 

1965年(昭和40年)に 「理学療法士および作業療法士法」 が施行されると、PT、OT によるリハビリテーションが行われるようになりました。やがて、日本は高度経済成長、人口の増加とともに高齢化社会を迎えるようになります。1989年(平成元年)に厚生労働省が「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」(通称:ゴールドプラン)を発表すると、病院でのリハビリテーションが主流となり、現在に至ります。

ここ数年では、消炎鎮痛を目的とした施術を行うために、あマ指師が医療機関に雇用されるケースは少なくなってきています。

 

2000年(平成12年)、介護保険制度の施行と前後して、高齢者を取り巻く環境は在宅医療へと大きく舵を切りました。超高齢社会を迎えた現在では、慢性疾患で療養されている方を対象とした、あマ指師による訪問マッサージを行う業態が増えています。

 

 「理学療法士および作業療法士法」 第2条によると、『理学療法とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう』 と定義されているように、PT、OT も業務としてマッサージを行うことが法文に明記されています。

 

理学療法士、作業療法士(PT、OT)は看護師と同様に、医師の指示のもと手技療法や物理療法を行うため、開業権は認められておらず、その多くが医療機関に就業しています。一方、あマ指師、鍼灸師、柔道整復師には開業権が認められており、医療機関で働くほかに独立開業の道も拓けています。

今後は、高齢者を取り巻く在宅医療、地域医療において、医療職、介護職と連携できるあマ指師、鍼灸師のあり方が問われています。

 

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